以前、注目されたビジネス書に「GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代」(以下本書)という本があります。
GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)
- 作者: アダムグラント,Adam Grant,楠木建
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 2014/01/10
「GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代」ってどんな本?
人をギバー(人に惜しみなく与える人)、テイカー(真っ先に自分の利益を優先させる人)、マッチャー(損得のバランスを考える人)の3つのタイプに分け、「成功するのはどのタイプなのか?」を論じた本です。
結論としては、「ギバー」が最も成功するというありがちな結論になるのですが、この本の特筆すべきは、そこからさらに一歩踏み込んだ所にあります。実はパフォーマンスが最も低い(会社におけるポジションが低く、平均給与額も低い)のも「ギバー」なのです。
同じギバーなのに、どうしてパフォーマンスに差が出るのでしょうか?その違いは「どのようなプロセスを経てギバー的振る舞いをするか?」にあるのです。
パフォーマンスの高いギバーとそうでないギバーの違いとは?
パフォーマンスの低いギバーは、他者に尽くして燃え尽きてしまう傾向のあるギバーです。一方、パフォーマンスの高いギバーは他者に尽くそうという動機ではなく、自分を満たすためにギブをします。よって燃え尽きることはありません。むしろ「自分の幸せ=人の幸せ」になっているので、「与える→満たされる→さらにギブする」という「ギブの好循環」が回り出します。
つまり、ギブするという行動は変わらなくとも、何を動機にギブをするかに違いがあるのです。この点を明らかにしたことが、類書とは異なる本書の価値です。しかし、残念ながら本書の結論は「ギブする行動を少しずつ始めましょう」と、想定内のものに留まってしまっています。
パフォーマンスの高いギバーになるためには?
僕はただ「ギブ」を繰り返すだけでは、パフォーマンスの高いギバーにはなり得ないと考えています。であれば、パフォーマンスの低いギバーなど存在し得ないはずです。ではその違いはどこにあるのでしょうか?ヒントは先ほどの「自分を満たす」です。
つまり「どこからギブをするかを転換できるか否か?」が、パフォーマンスの高いギバーとそうでないギバーを分けるカギになると考えています。これはただギブを繰り返すだけでは到達できない領域です。
まず「自分が何を動機にギブをしているか?」に自覚的である必要があります。自分に置き換えてみるとよくわかりますが、自分が何を目的にギブをしているかは、わかるようで自分でもわかっていないものです。「心から相手に与えているつもりでも、どこか打算的な狙いがあってギブをしている」、「本当は心底ギブをしたいのに、どこかで損することがイヤでついつい自分の利益を優先してしまい、結果セコいギブをしてしまう」なんてことはよくあります。
で、結局何がポイントなのか?
この時に大事なのは「結局自分は何を得たくてギブをしたのか?」と自分を見つめ、打算的な部分があればそれを受け入れていくプロセスです。このプロセスの中において、無意識に自分を守る力学が働いています。この力学に支配されている内は自分を守ることが目的のギブであり、どれだけギブをしても満たされることはありません。守られる必要がある弱い自分という前提であるため、いつまで経っても何をやっても自分は満たされず、結果として燃え尽きます。
「ギブの動機の転換」は、「ギブ」をしていく中で、この力学に支配されている自分を見つめ、少しずつ自分を解放していくことで起こります。シンプルですが、自分を創っていく力強いメカニズムではないでしょうか。