先日facebookにも投稿しましたが、2030年の未来の社会・企業の姿”を描き出す「21世紀未来企業プロジェクト」の活動報告会に参加してきました。
このプロジェクトは「ますます不確実性を増していく世界情勢の中、日本の社会・企業にどのような未来が訪れるのか?」という問いのもと、4つのシナリオを描き出したものです。
日本・海外の有識者やフィールドリサーチを経て、極めてリアリティのある4つのシナリオが描き出されました。
未来の分岐点となる要素とは?
本プロジェクトは「シナリオプランニング」という手法が活用されています。この手法は各方面へのリサーチを行い、そこから浮かび上がってくる「未来に影響を及ぼす不確実かつインパクトの大きい要素」を2つ抽出します。その2つを掛け合わせ全4つのシナリオを描きます。
「シナリオプランニング」の成否を決めるのはこの軸選びであり、今回のプロジェクトでは入念なリサーチの跡が伺える非常に巧みな軸が選ばれていました。
2030年の社会、企業、人のあり方に関する4つの異なるシナリオ
その結果描き出されたのが、下図の4つのシナリオです。
(http://www.hakuhodo.co.jp/archives/reporttopics/28808より)
詳細についてはリンク先を見ていただくとして、ここでは概要のみ紹介します。
シナリオ①は「三すくみシナリオ」。これは企業、政府、市民いずれもが個別最適に走った結果、社会の動きが停滞し、いまと状況がほぼ変わらないシナリオです。企業、政府、市民のいずれもが現状維持に走るとこのシナリオが訪れます。
シナリオ②は「個の台頭シナリオ」。こちらは文字通り、個人が自身や周囲の環境への変革を志向し、実際に行動すると訪れるシナリオです。ポジティブな面としては、働き方の自由度が増し、より一層フリーランスが働きやすくなったり、複業などが可能になります。ネガティブな面としては、いわゆる自己責任、成果主義の色が濃くなり、格差が拡大していきます。個人的には、企業や政府は変化が起こりにくい中、労働人口が減っていくことで、力のある個人の発言力が増していくことはほぼ確実視されていることもあり、現実味が高いシナリオでは?と考えています。
シナリオ③は「企業の目覚めシナリオ」です。食料問題や環境問題などで社会の持続可能性に危機が訪れ、それに貢献する企業のランクが高まっていくシナリオです。このシナリオの王者は「超国家CSV企業」で、ほとんどが外資系企業になると考えています。このシナリオではSDGsなどが新たな経営指標と位置付けられるようになるなど、一見先進的に見えますが、この流れについて来られるのは一部の人に留まり、超国家CSV企業に所属するような一部のエリート層が世界を引っ張り、ほとんどの人が労働者階級に位置づけられることになるのではないでしょうか。
シナリオ④は「クワトロ・ヘリックス・シナリオ」です。このシナリオでは企業、政府、アカデミア、市民の4セクターがひとつの未来ビジョンを共有し、民主主義的な合意形成を図りながら、イノベーションを生み出している社会です。
主体性高く社会に参画しようとする人にとっては生きやすい社会でしょうが、何かに従って生きようとする人にとっては変化が激しすぎ、生きづらい社会になるかもしれません。
バラ色の未来は存在しない
ご覧になっていただいたとおり、いずれのシナリオもハッピーエンドではありません。「クワトロ・ヘリックス・シナリオ」はグッドシナリオっぽく見えますが、内実は常に変化が求められ、高度な対話と合意形成が求められる、かなりハードモードなシナリオです。
これからはますます「誰かが最適な社会をいつの間にか作ってくれる」バラ色の未来は存在し得なくなっていくのだと思います。社会システムの変革を待つのではなく、一人ひとりの覚醒度合いと主体性の質の高まりこそが、善い未来づくりに繋がっていくのだという確信が、シナリオの検討と体感を通じてますます高まりました。